インフレ率は全般的な物価が変わる速さを表し、購買力はお金で何を買えるかを表します。インフレ率が下がっても、物価自体は上がり続けることがあります。買い物の負担が軽くならないと感じる理由を理解するには、率と水準を分けることが出発点です。
CPIは家計ごとの家計簿ではない
日本の消費者物価指数(CPI)は総務省統計局が作成します。定められた方法で多くの財やサービスを組み合わせるため、すべての世帯の支出をそのまま再現するものではありません。住居、通勤、年齢などによって、実際に負担する価格変化は異なります。
指数は個人の実感を否定するものではなく、共通の測定手段です。対象地域、比較期間、内訳を確認しましょう。東京都区部と全国の数値は置き換えられず、ある月の発表を年間平均として扱うこともできません。
上昇率が鈍っても価格は上がる
仮に1万円の買い物かごが3%値上がりすると、価格は1万300円です。その後の上昇率が1%に下がっても、次の価格は1万403円であり、1万円に戻るわけではありません。これは説明用の仮定で、日本の現在のインフレ率を示す数値ではありません。
全般的な物価水準の下落はデフレ、インフレ率の低下はディスインフレと呼ばれます。また、全体の指数が上がっている間にも、個別商品は値下がりし得ます。「インフレが落ち着いた」という表現が必ずしも生活費の低下を意味しない理由です。
所得と税引き後利息も見る
名目賃金が増えても、関係する生活費がそれ以上に増えれば、購買力は低下することがあります。反対に、自分の所得が自分の支出より速く増えれば、インフレ下でも余裕が増す場合があります。全国平均だけでは各世帯の結果は決まりません。
預金の利息も、税金、費用、物価変化を考慮して見る必要があります。金利がプラスでも実質購買力が増えるとは限りません。厳密な実質収益は、お金の増加倍率と物価の増加倍率を比べて求めます。小さい率では、名目金利から物価上昇率を引く方法が近似になります。
総合指数の内訳を読む
エネルギー、輸入原材料、為替、国内需要、賃金は、それぞれ異なる経路で物価に影響します。一時的な補助金や公的に決められる価格の変更も指数を動かします。一つの品目だけの変化と、多くの品目に広がる変化では、意味が異なる場合があります。
一部の品目を除く指数は傾向を見る助けになりますが、除外対象は国や系列によって異なります。必ず定義を確認してください。分析のために除かれた品目も、それを買う家計にとっては重要です。総合と各種の基調指標は補い合う情報です。
一つの発表で先行きを決めつけない
前年同月比と前月比、季節調整の有無、前年に特殊な出来事がなかったかを確認します。直近の価格変化が安定していても、比較対象の影響で前年比が動くことがあります。疑問があれば公式の利用上の注意や算出方法を参照しましょう。
家計管理、企業の価格設定、金融政策では、必要な内訳が異なります。統計がどの問いに答えているかを意識することが大切です。物価統計は判断材料になりますが、一度の発表だけで将来の金利、為替、運用結果が決まるわけではありません。
押さえておきたいこと
- インフレ率の低下と物価水準の下落は異なります。
- 全国平均の支出構成と、自分の家計の構成は違います。
- 購買力は物価だけでなく所得や税引き後収益にも左右されます。
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